短編怪談 #58 「死の臭い」
匂いって不思議ですよね。
好きな人を思い出したり
飼っていたペット思い出したり
匂いって何かを“思い出す”きっかけに
なることが多いと思います。
これはそんな匂いに関するお話です。
関西に住む20代の女性の話。
その方には付き合って2年の彼がいました。
仲が良くて毎日電話したり
夜に遊んだりする幸せ絶頂な2人でした。
しかし、ある時から
気になっていたことがありました。
それは彼の匂いです。
何故か線香の匂いがしていました。
最初はお家の匂いかな？なんて
思っていたんですが、
会うたびにその匂いが
強くなっていくのがわかりました。
あまりにも気になったので
思い切って聞いてみました。
「最近線香の匂いするよ？」
すると、彼自身は全くしないらしく
不思議そうな顔をされました。
それからも匂いは消えませんでしたが
次第に気にならなくなっていきました。
ある日、彼女は友人とランチに行きました。
会話の流れで彼の話をしていたとき、
ふと線香の話を思い出して友人に話しました。
すると友人は突然顔が強張り、
「しばらくちゃんと見ていた方がいいよ。危ないかも。」と言い出しました。
「え？なに？まさか浮気？(笑)」と
冗談交じりに返すと、
「そうじゃない。死相が臭いに出てるかもしれんから、とにかく最低でも1ヶ月はなるべく側にいて、いれなくてもすぐに会いに行けるようにしてた方がいい。」と
強めに言われました。
半信半疑ではありましたが、
あまりに真剣だったので
とりあえずその日の夜に
彼を説得して半同棲をすることにしました。
その時気付いたのですが
やはり彼の家には線香などなく
それらしき物も一切なかったのです。
半同棲が始まり、
1週間、2週間と日が流れ、
1ヶ月が経とうとした頃でした。
彼が仕事から帰るのを家でまっていると
彼から電話が鳴りました。
「駅まで来て欲しい」
迎えに来て欲しいという電話でした。
珍しいなと思いながらも
歩いて駅に向かいました。
改札付近で手を振る彼の姿が見えました。
彼女は早歩きで向かいます。
彼もこちらへ向かって来ました。
そして道路を渡り、こちら側へ到着した途端、
キキィーッ！という物凄いブレーキ音が聞こえ
改札口へトラックが突っ込んだのです。
幸い怪我人は出なかったそうですが
改札は見るも無残な姿になってました。
もしも彼と住んでいなかったら…
彼があと数歩でも遅ければ…
と考えると恐ろしくてたまりません。
その日を境に
線香の匂いがすることはなくなりました。
皆さんの周りにも
同じような匂いの人はいませんか？
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なにわの怪談師 れんれんです。
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