なにわの怪談師 れんれんの怪談ブログ

オリジナルの怪談や都市伝説、不思議な話を発信していきます。

短編怪談 #146「トンネルで」

これはアキさんという方から聞いた話です。

 


ある夏のこと。

アキさんは

当時仲の良かった友人たちと

男2人、女2人

アキさん含む計4人で、

肝試しに行ったそうです。

仮に友人たちを

タケシさん、ユウタさん、ミナコさん

とします。

 

 

 

その場所は

「落ち武者が逃げ込み隠れた」

そんな言い伝えがある

地元のトンネル。

 


そこは道幅が狭くて車など通れず、

歩いてすれ違うのも肩が触れ合ってしまうほど。

壁は岩がむき出しで、

150m程のトンネルを抜けると

海に繋がっているのですが、

断崖絶壁になっています。

 


柵はあるものの、

何とも頼りなさげな作りなので

心霊関係なく、恐い場所です。

 


一応観光地なので

昼間はそこそこ人が来るようですが、

夜になると周りに民家があるわけでもなく

外灯も少ないし、トンネル内に

ライトなど付いていないので真っ暗。

 


そんな場所への肝試しを提案してきたのは

タケシさんでした。

タケシさんの友達が

例のトンネルで落ち武者を見た…と。

 


肝試し当日、4人が集合し

現場へ向かいました。

 


現場は真っ暗で

トンネルの先の出口がぼんやり見える程度。

一応明かりとしてちいさな懐中電灯を

100均で2本購入しては来ましたが、

ほとんど意味はありませんでした。

 

 

 

トンネル内は狭いので

一列になって進まなければなりません。

先頭は言い出しっぺのタケシさん

アキさん、ミナコさんは

タケシさんとユウタさんの間に挟まり、歩きます。

タケシさんが進行方向を照らし、

ユウタさんが後ろから

みんなの足元を照らす形で

懐中電灯を持つことになりました。

 

 

 

トンネルの中は肌寒くひんやりとした空気に

身震いするほどで、波の音だけが

微かに聞こえてきます。

 


壁や足元は濡れていて、

天井から落ちた水滴が顔にあたっては

ギャーギャーと騒ぎながら進みました。

 


トンネルの半分くらいまで来た時、

後ろのユウタさんが「うわっ」と叫んで転びました。

 


その声に驚いたアキさんたちは驚き、

「何!?やめてよ!」「ビビらすなよ!」と

笑いましたが、心臓はバクバクしていました。

 


ユウタさんは立ち上がりながら

今度は「あれ?」っと周りを

キョロキョロし始めました。

 


「どうしたの?」と聞くと、

濡れたズボンをパタパタ払いながら

「今誰かとすれ違ったよな?」と言うのです。

 


もちろん誰ともすれ違ってなどいませんから、

「誰もおらんよ?」と返したそうです。

 


すれ違うとなると

肩が触れ合うほどの狭さなので、

気が付か無いはずがないからです。

 


ユウタさんは

「そんなはずねえよ!だって、肩がぶつかって俺こけたんだぜ?」

と強く言いました。

 


タケシさん「いや、誰ともすれ違ってないし。どんな奴とぶつかったんだよ。」

ユウタさん「どんなって、俺下向いてて姿とか見えなかったから…急に足が見えてドンって…俺は誰とぶつかったんだよ…。」

 


ユウタさんは

自信なさげにだんだんと

声が小さくなっていきました。

 


最初はみんな、ユウタさんがふざけて

驚かそうとしているんだと

へらへらしていましたが、

様子を見るに、冗談には思えなかったそうです。

 


アキさん「ねえ、戻らない?」

そう提案すると、

ユウタさんも

気味の悪い状況に疲れたのか

「もう帰ろうぜ」と小さい声で言いました。

 


しかし、ミナコさんとタケシさんは

「えー、せっかくここまで来たんだから行こうよ。」

「どうせユウタの気のせいだって。とりあえず行ってみようって。」

 


2人は心なしか少し楽しそうでした。

 


今すぐにでも出たい

アキさんとユウタさんは「どうする?」と

顔を合わせた後

どんどん突き進む2人に向かって

「ごめん先戻るわ」と声を掛け、

速足で入口へと向かいました。

 


もうあと少しで外に出れるという辺りまで来ると、

鳥や虫の声が聞こえだし、

夏の夜の生ぬるい空気に少しホッとしました。

 

 

 

すると突然、トンネルの奥から

「うわぁぁぁぁあーッ!」という叫び声と共に

バタバタ走ってくる音が聞こえます。

 


何事かと振り向くと

タケシさんとミナコさんが必死の形相で走ってきました。

 


パニック状態の2人はそのまま車の方まで猛ダッシュしていたのでとりあえずついて行き、

全員車へ乗り込みました。

ミナコさんは途中、思いきり転んで足を擦りむいてましたが

それどころではないようで、

2人は車に飛び乗ったと同時に

「車出して!早く!」と叫びました。

 


何が何だか分からないまま、

運転手のユウタさんが車を発進させます。

アキさんは助手席に乗っていたのですが、

怖くてサイドミラーを見ることが出来ませんでした。

 


とりあえず明るいところへ行こうと、

車を10分ほど走らせたところにあった

ファミレスへ入り、お冷で一息つくと

タケシさんとミナコさんが

興奮気味に話し始めました。

 


タケシさん「トンネルの出口付近までは何もなかったんだけどさ、あと少しってところで後ろから誰かが走ってくる音が聞こえたんだよ。」

 

 

 

タケシさん「また滑って転んでも知らねーぞとか思いながら振り向いたら、はっきりしないボヤッとした黒い人影が走って来ててさ…避ける間もなく俺らも柵も通り過ぎたというか通り抜けて、そいつ真っ直ぐ海に落ちて行ったんだ…けどさ…」

 


アキさん、ユウタさんが無言で聞いていると、

 


タケシさんは続けました。

「落ちる寸前…俺らの方に顔を向けたんだよ…

両目をカッと見開いてさ、口を大きく開けて…鬼みたいな顔して睨みつけてた…男で…こっちに手を伸ばして…。」

 


しばらく沈黙が続いた後、

 


タケシさんは

「よし!とりあえず何か食べて落ち着こう!」

と話題を変えて、

ご飯を食べることにしました。

各々が好きなものを頼み、

全て食べ終わる事には

全員少し落ち着きを取り戻していました。

 


その後、しばらく雑談をした後、

さて帰ることになり

店を出て車へ向かったとき、

血の気が引いたと言います。

 


4人の車からぽたぽたと雫が垂れ、

その周りはびっしょりて濡れいていたのです。

もちろん雨も降っていないし、店に入る前は濡れていなかったと言います。

 


何よりも奇妙だったのは、

他の車は一切濡れていなかったことでした。

 


帰りの車は先ほど同様

シーンとしていたそうです。

 


その場所、今でも観光地として客が訪れているが、

もう二度とあのトンネルには近づかないと

心に決めたそうです。

 

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