短編怪談 #93 「トンネルのおばあさん」 - なにわの怪談師れんれんの怪談ブログ

これは僕が昔していたバイトの先輩
KDが体験した話です。

KDは普段、車での移動が多いのですが
その日は珍しく徒歩でした。
時間は夜中の1時〜2時。
大阪のJR某駅にある
地下トンネルを歩いていたKDは
ふと後ろに気配を感じました。
しかし振り返っても
誰も居ませんでした。
時間も時間ということもあり
ビビリのKDは少し怖くなり
早歩きしました。
けれども、やはり気配を感じます。
もう一度振り返ると
はっきりとはわからなかったそうですが
おばあさんのような人影が
数十m後ろに見えたそうです。
完全に見てはいけないものを見たと
思ったKDは
とにかく早くトンネルを抜けようと
急ぎ足になります。
しかし、だんだんと
そのおばあさんらしき人影と
自分の距離が縮まってきているのが
感覚でわかりました。

ヤバい…ヤバいと思いながら
ダッシュでトンネル駆け抜けました。

トンネルを抜けてすぐ
振り返ってみると、
そこにおばあさんは居ませんでした。

夜中だったので
眠たさも相まっての見間違いかな…
なんて淡い期待を抱きながらも
後日、その話を
当時の仕事仲間との飲みの場で
話した時に
それが見間違いでも
勘違いでもなかったことが証明されました。

話を聞いていたひとりが
突然、物凄い形相で
「それいつ頃！？」と詰め寄って来ました。
KDはびっくりして
８月の中頃ぐらいやったかなー。と
だいたいの時期を伝えると
さらに畳み掛けるように
身長は？年齢どのくらいやった？
と聞いてきたので
周りのみんなも不思議に思い
「おい、落ち着けよ。どしてん？」と
宥めてから
詳しく事情を聞くと、
KDがその体験をした
ちょうど１年前のその時期に
おばあさんが
自転車との接触事故で亡くなった
とのことでした。