短編怪談#126「友人の部屋は？」
これは、僕の知り合いの
武田さんが体験したという話です。
彼は数年前のある日、
当時仲の良かった友人と
家飲みをする約束をしました。
その友人は
マンションに住んでいたので
武田さんは仕事終わりに
そこへ向かったそうです。
「えっと…〇〇マンションの304か…」
仲が良いとはいえ、
家には初めて行くので
事前にもらった情報を頼りに向かいます。
「お、これかな？」
武田さんはそれらしきマンションを見つけ、
ガラス張りの入り口の中に入りました。
入ってすぐ右手に
部屋番号を入れるタイプの
インターホンがあったので
番号を押します。
「304っと。」
プルルル…プルルル…
ガチャッ
「……」
「あ、武田ですけどもー」
ガチャッ
ツーッツーッ
ウィーンガチャ
「無言かよ、愛想の無いヤツ。」
無言で鍵を開ける友人に
少しイラッとしたそうですが
直接文句でも言ってやろうかと
足早に部屋へ向かいます。
3階なので武田さんは階段を使って
スタスタと駆け上がりました。
「結構疲れるな…ふぅ…」
なんて言いながら
304号室を探します。
ところが、いくら探しても
304号室が見当たらないのです。
「あれぇ？おかしいな。」
その階のフロアを行ったり来たり
何度往復してもありませんでした。
武田さんは仕方なく、
友人に電話をかけることに。
プルルルッ
プルルルッ
ガチャッ
ツーッツーッ
電話が上手く繋がりません。
「チッ、こんなときに…」
武田さんはかなりイライラしながら
何度も電話をかけますが
一向に繋がる気配がありませんでした。
プルルルッ
ガチャ
ツーッツーッ
「あー、もういい！帰ろう。」
結局、会うことはできず
武田さんはそのまま帰ることにしたそうです。
モヤモヤした気持ちを抑えながら
マンションを出ました。
自宅に帰って
寝る準備をしていた頃でした。
電話が鳴りました。
「来ないの？」
例の友人からでした。
あまりにあっけらかんとしている
友人の態度に武田さんは
怒ることもできず
「行ったよ、でも304なんて無かったぞ」
「…（またかよ…）あっごめんごめん、たまにあるんだわ。部屋に来れないこと」
友人はそう言いました。
武田さんは
「えっ？どういうこと？」
と聞き返すと
友人は
「なんか、変なんだよねここ。よくそういうこと言われる。」
と言うのです。
なんでも
人を呼ぶと必ずと言っていいほど
辿り着けないのだそうで、
毎回怒られるのだそうです。
「ごめんね、悪いけどもう一回今度来てくれる？」
と友人は言いました。
そして
「今度は下まで迎えに行くよ」
と続けました。
武田さんは了承し、
数日後、会うことになりました。
今度はマンションの入り口で
友人が待っていました。
友人と一緒に部屋に向かうと
なぜかそこには、以前はどこにも無かった
304号室があったのです。
部屋に入ってみるものの
特段何かが起きそうとかでもないらしく、
友人自身も何故そんな現象が起きているのか分からないそうです。
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