短編怪談 #127「カメラに写った人」
これは、友達の
佐々木（仮）から聞いた話です。
友人はカメラが趣味で、週末にはいつも
カメラを片手にあちらこちらへ
写真を撮りに行っていました。
そんな友人は少し前から何故か
「廃墟」に魅せられ、
地方の廃墟へ行っては忍び込み、
中を徘徊して
パシャリパシャリと撮影したものを現像し
それをまとめてアルバムにしたり
していました。
元から結構変わったヤツではあったので
まぁ…そんなこともあるかな？
ぐらいにしか思っていなかったのですが
最近になり、変なものが
写るようになったと言います。
それは
黒いモヤのようなものだそうです。
その黒いモヤはどこに行っても
写真を撮る過程で、
必ずどこかのタイミングで一枚には写るそうです。
ある日、その黒いモヤの正体を
つきとめてやろうと思い立ち
例の“黒いモヤ”が
写った写真が撮れたタイミングで
カメラを向けた場所へ
見に行ってみようと考えたそうです。
そう思い立った佐々木は
次の週末に早速
とある地方の廃棄に撮影に行きました。
現場に到着し
「絶対見に行ってやる」
そう意気込んで
廃棄へ忍び込み
写真を撮り始めました。
パシャ パシャ
忍び込んでから約1時間
色々な場所を撮影したそうですが、
その日は300枚ほど撮っても
黒いモヤが全く写らなかったそうです。
意気込んでいただけに
「なんだよ…なんも写らねぇじゃねぇか」
と残念なような
ちょっと安心したような
複雑な気持ちだったと言います。
その後もしばらく撮影したものの
特段変わったものも写らなかったので
佐々木は諦めて帰ることにして
近くに停めていた自分の車に戻り
自宅に向かって運転し始めました。
ただ、普段はあまり行くことのない
地域だったらしく
途中で方向が分からなくなってきたので
自宅までの道をナビに入れることにしたそうです。
すると、行きの時には通らなかった道に
案内されました。
「あれ？合ってるか？これ」
佐々木は若干不安になりながらも
とりあえずナビに従うことにしました。
ナビに従い、走り続けると
右手の方に廃墟が見えてきたそうです。
「お？これは…」
佐々木は突然現れた廃墟に
つい心が動いてしまったそうです。
すぐに入れそうな道を見つけ
廃墟の方に向かいました。
「ここだけ少し撮ったら帰ろう」
そう決めて廃墟の側まで行き、
車を停めて
再びカメラを持ち出して
撮影をし始めました。
すると、まさかの事態が起きました。
どこで撮影しても
例の黒いモヤが写るではありませんか
しかも
その黒いモヤが
どんどん自分に近づいて来ているような
気がしてならないのです。
佐々木はチャンスと思い、
「今度こそ見に行ってやる」
と再び意気込みました。
パシャリ
「撮れた！」
佐々木は絶対に正体を見てやる
とダッシュでそこに向かいました。
しかし、
そこには誰もいませんでした。
「たしかに撮れたのになぁ…」
とカメラのデータを確認して
佐々木は気を失いそうになりました。
なんと、そこには
佐々木が写っていたのです。
無表情で呆然と廃棄で立ち尽くす
自分の姿が
まるで本当にそこに
立っているかのように
写っていたのです。
「え？え？？」
状況を飲み込めず、
だんだんと怖くなってきた佐々木は
一目さんに家まで飛ばしました。
なんとか家までたどり着いたそうですが
その日以来、佐々木は
廃墟に行くのをやめたと言います。
今現在、特に変わったことは
起きていないそうですが
今でも、あの時のことを
思い出すとゾッとするそうです。
あの時写ったもう一人の自分は
なんだったのでしょうか。
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なにわの怪談師 れんれんです。
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