短編怪談 #128「独り言」
これは霊感の強い
ゆーたろーくんが今年の4月中頃に体験したというお話です。
僕は「なにわの怪談らじお聞いてみん怪」という
ラジオ番組のパーソナリティをしているのですが
そこにゆーたろーくんもちょくちょく出てくれるんですね。
最後にゆーたろーくんと収録したのが
ちょうどその4月中頃でした。
収録からしばらくした頃、
ゆーたろーくんは
“見えやすい時期”に突入したようで
かなりしんどかったそうです。
彼曰く
「常に見える訳ではないけど、近くにずっと誰かがいるような感覚」
だそうです。
気配は感じるのに姿が見えない状況に
精神的にかなり参っていたようで
それに加えて仕事でも色々あったらしく
そのせいか、よくブツブツと独り言を言うようになっていたそうです。
元々独り言を言う癖はあったそうですが
その時期の間は無意識に
誰かに話しかけてるような感じがしてたそうです。
自分でも
何を言っているのか？誰に言っているのか？
よく分からない独り言を言ってたらしいのです。
そんな事がしばらく続き、
「そろそろキツイなぁ」と思っていたある日のことでした。
いつものように仕事から車で帰っていると
だんだんと道が混んできました。
車が完全に止まったと同時くらいに車のナビが
『この先何キロメートル渋滞してます』と鳴り、
それに対してゆーたろーくんが
「事故かなー」と無意識に独り言を言った時でした。
耳元で「はぁ」と、
人のため息のような音がしました。
聞き間違いかとも思いましたが
時期的なことを考えると
「誰かこの車の中におるかもな…」
と思う方が自然でした。
それならばちょっと試してみよう
と思い立ち、いつものように独り言を
何回か言ってみることにしました。
すると、ゆーたろーくんが発した独り言に対して
返答とも取れる反応が返ってきたそうです。
それを機に、ゆーたろーくんは
確実に何かしらの存在が
近くにいることを確信したわけですが
無意識に自分から発する独り言が、
どんどんネガティブな内容になっていることに気付きました。
「しんどいなぁ」とか
「もう全部終わりにしたいなぁ」とか
かなりマイナスエネルギーを持った言葉を発していて
それらのほぼ全てに対して
何者かの「はい。」「はい。」と言う返答が返ってきていたそうです。
当時を振り返り
「その返事を待ってる自分がいた。」
「このままどっか連れていかれるんちゃうかな」
と思いながらもやめられなかったと
言っていました。
その何者かとのコミュニケーションは決まって
車の中で出来たそうで通勤中でも、
休みの日でも関係なく
独り言に対して「はい。」と
返してきていたそうです。
そんな日々を過ごしていたため、
「これはやばいな」と思い、
しばらくの間、ラジオの収録はもちろん、
他の友人たちからの何かしらの誘いも断っていたそうです。
それから数週間が経ち、
気配はだんだんと薄くなり、
消えたようでした。
「もう大丈夫やな」
そう思い、安心していたのですが…
ついこの間、仕事終わりのことでした。
運転中に聞こえたそうです。
「はぁ…」
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なにわの怪談師 れんれんです。
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