短編怪談 #135「笑う女」
これは、僕の知り合いの
「田中さん」から聞いた話です。
田中さんは大阪で
サラリーマンをしている方なのですが
ある日の仕事帰りに奇妙な体験をしたと言います。
数年前のこと、
いつものように仕事を終え、
電車に乗って帰っているときでした。
どこからともなく
「ハハハハッ
ハハハハッ」
と女性の笑い声のような音が聞こえてきたそうです。
田中さんは驚いたそうですが
ふと時計を見ると夜の23時。
「時間も時間、酔っ払いかな。」
と冷静に考えてあまり気にしないようにしたそうです。
田中さん自身、あまり心霊の類いには興味がなく
かなり現実的なタイプの人なので
このときは恐怖という感情は一切無かったそうです。
数分後、
自宅の最寄駅に着いた時でした。
また、例の笑い声が聞こえてきたのです。
「ハハハハッ
ハハハハッ」
田中さんは流石に少し焦りました。
電車に乗っていたのかなと思い、
辺りをキョロキョロしても
笑っているような人は居ない。
田中さんは
気味が悪いその声から早く逃れたい一心で
足早に自宅まで歩きました。
「気持ち悪いなぁ、なんやあれ。」
などと、独り言をぶつぶつ言いながら早歩きをし、
自宅まであと数十mほどになった頃でした。
「ハハハハッ
ハハハハッ」
また笑い声です。
田中さんは驚いて
見回すと、
田中さんの家のすぐ近くにある電柱の陰に、
誰かが立っていることに気が付きました。
ワンピースのような服を見に纏った
見知らぬ女でした。
「ハハハハッ
ハハハハッ」
その女はただひたすら、
田中さんの方を見て高らかに笑っていたのです。
「ハハハハッ
ハハハハッ」
田中さんはその異様な光景に
どうしていいのか分からず、
しばらく動けずにいたそうです。
次の瞬間、固まっている田中さんが
自分のスマホを落としました。
そのタイミングで
我に帰った田中さんは
急いで家に向かって走り
なんとか家まで辿り着きました。
田中さんはすぐにドアの鍵とチェーンをかけ
窓は全てカーテンを閉めました。
しばらくしてから窓を開けて見てみると
女はいなかったそうです。
もう何年か前の話になりますが
その日以来、同じ女は見ていないそうです。
その女が結局何だったのか
何の目的で田中さんに近寄ってきたのか
今でも分からないままだそうです。
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