短編怪談 #118 「公園の女の子」
これは、数年前に
ある居酒屋で知り合った
木田さんから聞いた話です。
その人がまだ子供だった頃
近所によく行く公園があったそうで
母とはほぼ毎日、
週末には父親も連れて
よく行っていたそうです。
遊具の種類が多く、
運動器具もあったので
父親とは、よくそこで遊んだり
していたといいます。
その公園には、毎日のように
ブランコに乗っている女の子がいました。
その子は、朝からずっと
木田さんたちが
帰る時間になっても
ブランコの上で
ボーッとしていたそうです。
不思議な子だなあ
と子どもながらに思っていたそうですが
特に気にすることはなく
公園に通っていました。
毎日見かけるその子は
肌寒い季節になっても
夏と変わらない格好をしていました。
赤いスカートに半袖のTシャツ
キャラクターものの運動靴。
当時を振り返って
「いや、普通おかしいよねw」
と笑っていましたが
子どもだった木田さんは
そういう子もいるのか
ぐらいにしか思っていなかったそうです。
ある日、何気に母親に聞いてみたそうです。
「ねぇ、あの子ずっといるね。」
と。
すると、母は不思議そうな顔をして
「誰もいないよ？」
と返したそうです。
この時点で木田さんは
ちょっと怖くなったそうですが
あまりにハッキリ見えるその子が
まさか他の人に見えていないとは
思えなかったらしく、
母は自分を怖がらせるために
嘘をついているんだと
思ったそうです。
そして、なぜか木田さんは
その日は思い切って話しかけてみよう
と思ったそうです。
「おそらく、母に
別に怖がっていないぞ
と見せたかったんだろう」
と木田さんは言いました。
「ねぇねぇ、いつもなにしてんの？」
木田さんは女の子に近寄り
話しかけました。
すると、女の子は
しばらく間を置いて
「別になにも」
冷たい言い方でそう返してきました。
せっかく話しかけてやったのになんだよ
と思ったそうですが
「遊ぼうよ。」
と食い下がって
もう一声かけてみたそうです。
しかし、女の子は
「別にいい。」
と相変わらずの返事。
諦めて母のもとへ戻ろうとした
そのときでした。
女の子が突然、どこかへ向かって
走り出したのです。
木田さんは驚いて、思わず
「ねぇ！どこいくの！」
と叫びましたが
女の子は構わず走って行きました。
あまりに足の速い女の子を
追いかけきれず、
ヘトヘトになった木田さんは
トボトボと歩いて
探していると
女の子は近くの交差点で
止まっていました。
木田さんは近づいて
「ねぇってば！どこいくんだよ！」
と言うと
その瞬間、女の子が交差点の道路に向かって
走り出したそうです。
木田さんは
「車いるよ！危ない！」
と叫びながら
道路に飛び出したそうです。
ブブーッ
車のクラクションが
鳴り響きました。
それと同時に、
木田さんは物凄い力で
後ろに引かれ、倒れました。
そこには
血相を変えた母がいました。
「なにしてんの！死んじゃうよ！！」
すごい剣幕で怒る母を見て
木田さんは思わずその場で
大泣きしたそうです。
後になり分かったそうですが
木田さんが飛び出した交差点は
何年か前に、女の子が車に撥ねられる
痛ましい交通事故が
あった場所なのだそうです。
もしかすると
木田さんは、女の子に
呼ばれていたのかもしれません。
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