短編怪談 #120「エスカレーター」
これは、友達の
三木（仮）から聞いた話です。
ある日のこと、三木は
朝から仕事の用事で
普段はあまり乗らない電車に乗り
大阪の端の方まで足を運びました。
出先の最寄駅は
少し高さのある駅で
ホームから見える
街並みがとても綺麗だったそうです。
出先に到着して仕事の諸々を終える頃、
時間は18時くらいでしたが
まだ外は薄暗い程度でした。
自宅に帰るために駅に向かいました。
駅に到着して改札をくぐり
駅のホームへと続く
上りエスカレーターに乗った時でした。
コツコツコツコツ…
後ろの方から
ヒールで歩くような音が聞こえたので
「後ろから誰か来たのかな？」
と思って端へ寄ったそうです。
一向に通り過ぎる気配がないため
三木がゆっくり後ろを見ると
そこには誰もいませんでした。
「あれ？おかしいな…」
再び、前を向いて
エスカレーターに乗っていると
コツコツコツ…
もう一度、
次はパッと振り向いてみたそうです。
すると、何段か下に
一枚の切符が落ちていることに
気づきました。
その切符に記載してある駅名は
すぐ近くの駅でした。
三木は
「誰かの落とし物かな、一応届けよう」
と思い、改札付近の
駅員室まで戻って
その切符を届けることにしました。
「あの、これエスカレーターに
落ちてたんですけど」
三木がそう言いながら
手渡した切符を見た駅員は
不思議そうな顔で
「お客さんこれ、
いつどこで拾われましたか？」
と聞いてきました。
「あ、さっきです。ほんの5分前」
「え？ほんとですか？」
本当のことを答えているのに
あまりに駅員がしつこく確認してくるので
「なんなんですか？なにかありました？」
と、少し怒った口調で言うと
駅員はこう言いました。
「あ、すいません。実はこれ…
今からちょうど1年前の切符なんですよ。」
「ど、どういうことですか？
さっきエスカレーターの途中で
見つけたんですよ？」
と言った瞬間
「もしかしてそのとき…」
駅員は何かを言いかけたまま
うつむいてしまったのです。
その様子を見た三木は
何かがあると察して
そのモヤモヤを抑えきれず
帰り道に携帯で調べてみることに
したそうです。
「〇〇駅 事故」
や
「〇〇駅 事件」
など
あれこれワードを打ち込み
検索しようとすると
検索ワードの中に
「〇〇駅 人身事故」など
何やらそれらしい
記事を見つけました。
それは
人身事故の記事でした。
全てを話すと生々しくなるので
内容をざっくり言うと
ヒールを履き、
ドレスを身にまとった女性が
突然線路内に飛び込んだそうです。
その女性は
まさか飛び込み自殺をするような
身なりはしていなかったそうで
当初は誰かが故意に突き落とした
殺人事件として
捜査されたようですが
最終的に女性の持っていたスマホを調べた際に
自殺と断定されたそうです。
その女性のトーク画面には
ひとりの男性に
「いまからいくね。」
と送った履歴だけが
残されていたそうです。
その事件があったのが
三木が切符を拾った日の
ちょうど1年前だったそうです。
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